2013年6月18日火曜日

難問をやさしくする法

前回の「頭の回転が速いということはどういうことか」の続きになります。

「難問をやさしくする法」- 多湖輝
 一見ひじょうに複雑な数学の問題も、一定の法則を発見することによって意外にかんたんに解けることがある。たとえば、「一から十までの数字を全部加えると五十五になる。それでは、一から一万までの一万個の数字(整数)を加えるといくつになるか」(制限時間・三十秒)
 むろん、まともにやっていたら、たいへんな計算になる。そこで、何かかんたんにできる工夫はないか。
 この問題の原型は、有名な数学者・ガラスが、まだ少年のころに考え出したものである。彼は、一から百までの全整数を合計するとき、この全数を一と百、二と九十九、三と九十八というように、両端から一つずつ、加えて百一になる二つの数の組として考えた。こうすれば、この組は、全部で五十あるから、合計は、百一の五十倍で、五千五十になる。じつに簡単な計算法である。この問題も、同様に考えれば、まったくかんたんになってしまう。つまり、一と一万、二と九千九百九十九のように、加えて一万一になる数の組が、五千あると考えればいいのである。したがって答えは、10001×5000=50005000 五千万五千ということになる。

 言われてみれば、「なあんだ」というこいとになるが、この計算法を、はじめて思いついた人は偉大である。問題にあるように、三十秒で、何の予備知識もなく、この方法に思い至った人がいたとすれば、その人も、大数学者・ガウス並みの頭脳の働きをもっているといえるだろう。ほかに使いなれた、あたりまえの計算法があるのに、もっとかんたんな方法はないかと、鋭く真剣に頭をめぐらせる。
 とくに、この問題のように、とほうもなく長い時間を要するであろうと思われて、じっさいに窮地に陥ったとき、機敏に頭を回転させて、与えられた問題の本質を見抜き、条件を整理し、法則性を発見していく。これこそ、典型的な頭脳のフル回転といっても過言ではない。
 こんなふうに、頭の使い方ひとつで、むずかしい問題が、急にやさしくなってしまったり、能率やスピードが、ぐんと上がったり、窮地を脱出できたりするような例は、日常生活の中にもたくさんある。たとえば、てきぱきとものごとを処理できる能力とか、一を聞いて十を知る理解力や勘のよさとか、はては、ユーモアやウィットのセンスにまで結びついてくるのが、ここで問題にしようとしている、頭の働きの心理学的側面である。
 そういうことを含めて、いわゆる上手な頭の使い方の例は、ほかにもまだ、いくらでもあるだろう。が、問題なのは、方法を知っていても、いざ本番という段になって、せっかくの知識が、あんがい、使わずじまいになることが少なくないということである。
 ここに紹介した計算法にしても、ふつうの計算法が頭にこびりついているかぎり、とっさのさいに、頭の切り換えができにくい。アイデア開発の方法や、非常事態や行き詰まりに直面したときの奪回策、ユーモアやウィットにあふれる処世術などを知識として心得ていても、それがやはり、いざというときに役に立たないことが多いのだ。これはいったいなぜだろうか。つぎに、それを考えてみることにしよう。
 
エジソンのたまごですね・・・。

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